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がん治療の実態~がんの治療にはお金がかかる!高額化する先進医療を解説~

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がん治療の技術は日々進化しており、費用も高額化する傾向にあります。特に公的医療保険の対象とならない先進医療は期待が高い反面、お金の心配から逃れることはできません。がんの治療費はどこまで保険でカバーできるのでしょうか。ここでは、がん治療の最新事情について解説します。

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コラムサマリ

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  • 現代では多種多様ながん治療が開発されている
  • 先進医療は2020年11月時点で80種類。全額自己負担となるため費用は高額
  • 先進医療をカバーしている医療保険もある

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がん治療の多様性

がん治療といえば、手術で切り取るか抗がん剤を投与するといったイメージがありますが、現在では多種多様ながん治療が開発・施術されています。その種類には従来の手術(外科治療)や薬物療法、放射線治療に加え、集学的治療、造血幹細胞移植、免疫療法、がんゲノム医療や遺伝子検査などが挙げられます。

先進医療とは

法律(※)には先進医療について「厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」とあります。

(※)健康保険法等の一部を改正する法律(平成18年(2006年)法律第83号)

つまり、新しくて効果が期待できるけれど、公的医療保険の対象にして一般的に使用できるかどうかを調べる必要がある治療法、ということです。「先進」という言葉を「既存の公的医療保険の対象のがん治療法に比べて効果が高い」という意味でとらえるのは誤解です。

現在の先進医療の実態

厚生労働省によると、先進医療は2020年11月1日現在で80種類あるとされています。有効性や安全性が確認され、公的医療保険の適用が認められれば先進医療から外れます。

また、医療技術の進歩により、新たに評価が必要な治療法が出てきて先進医療に加わることもあります。2019年7月1日から2020年6月30日までの実績によると、実施件数の多い先進医療としては、以下のような治療法があります。

  • 陽子線治療(1,196件)
  • 重粒子線治療(703件)
  • MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法(1,114件)
  • ペメトレキセド静脈内投与及びシスプラチン静脈内投与の併用療法(804件)
  • パクリタキセル静脈内投与(655件)

ちなみに、昨今注目されているゲノム治療も一部先進医療に採用されています。がんゲノム医療とは、患者の遺伝子を調べることによって、一人一人の体質や病状に合わせた治療ができる医療技術です。

20年前の先進医療との比較

2000年の先進医療の技術数は72、医療機関数は107、患者数は5015人、費用総額は45億円でした。約20年後の2019年の先進医療の技術数は88、医療機関数は1,184、患者数は3万9,178人、費用総額は297.5億円となっており、内容・規模ともに大きく変化しています。

技術数は60~125間の増減を繰り返している状態です。しかし、高度な医療技術を駆使できる医療機関が増えてきたこと、対象となる患者が広がってきたことを受けて実施件数が増加し、それに伴い費用も高額化してきました。2000年の頃と比べると、先進医療の費用は約7倍になっています。

先進医療は全額自己負担

では、公的医療保険の自己負担が3割の人の場合の例を見ていきましょう。1ヵ月の医療費は200万円、うち先進医療にかかる費用が100万円、通常の治療と共通する部分(診察、検査、投薬、入院料)が100万円とします。

通常の治療は公的医療保険が適用されるため患者の自己負担は30万円です。さらに公的医療保険の自己負担分は高額療養費制度により上限が設けられているので、会社員(70歳未満・月収28~53万円未満)の場合、実際の自己負担額は8万7,430円になります。一方の先進医療は、公的医療保険の対象外のため、100万円そのまま自己負担です。そのため自己負担の総額は108万7,430円ということになります。

先進医療の技術料の例

先ほどの例では先進医療の費用を100万円としましたが、実際の医療費は実施する技術名や医療機関によって異なります。

以下は2019年に報告された先進医療別の医療総額から割り出した、1件当たりの平均負担額です。がん治療のうち、実施件数が多いのは以下の通りです。



「陽子線治療」は、放射線の一種である粒子線(陽子線)を病巣に照射することにより、悪性腫瘍を治療する方法、「重粒子線治療」は、重粒子線(炭素イオン線)を体外から病巣に対して照射する治療法です。いずれもがん治療における先進医療として代表的な技術です。

医療機関ごとに多少の違いはありますが、陽子線治療は約270万円、重粒子線治療は約310万円かかります。この金額が全額自己負担で、高額療養費制度の対象にもなりません。個人が負担するにはあまりにも大きな金額です。

先進医療の費用を保険でカバーするには?

がんの三大治療法である手術、薬物療法(抗がん剤)、放射線治療でもうまく成果を得られない場合、先進医療という選択肢も浮上します。先進医療が適切かどうかは担当の医師が必要性と合理性を見極めて判断することになっています。

先進医療を実施している医療機関は大学病院や医療センター、研究センターなど特定の機関に限られ、例えば陽子線治療を行っているのは国内で18施設しかありません。各種条件がそろっていざ治療を受けてみようとなった場合、費用の問題で諦めてしまうのは後悔が残るでしょう。

がん保険で先進医療を保障

先進医療はがん保険でカバーすることができます。特約で先進医療保障を付けるタイプと、主契約の保障に組み込まれたタイプの保険とがあり、どちらかというと一般的なのは前者です。

先進医療保障の内容は、多くの場合実際にかかった技術料と同額の給付金が支払われます。支払限度額は2,000万円が多いようです。陽子線治療や重粒子線治療は回数にかかわらず200~300万円なので、よほど先進医療に適合するがんに何度も見舞われない限り、十分な保障額でしょう。

なお、金額が高額になるため、保険会社が給付金を医療機関に直接支払うサービスもあります。

先進医療保障の限界

特約を付けると保険料が高額になるイメージがあるかもしれませんが、先進医療特約に関しては月額100~300円程度から加入が可能できる場合が多いです。なぜなら、先進医療を受ける可能性はかなり低いからです。主ながん治療の先進医療である陽子線治療と重粒子線治療合わせても、年間実施件数は2,000件ほどと多くありません。一方、厚生労働省が2017年にまとめたがん(悪性新生物)患者の数は178万人。つまりがんにかかっている人のうち先進医療を受けるのは0.11%ほどしかいない計算です。

先進医療で気を付けたいのが、通常のがん治療より効果が高いことは実証されていない点、そして全てのがんに有効な治療法ではない点です。しかし先進医療は次々と新しい技術が追加されているため、今後対象となる先進医療が増える可能性も否めません。そのような事態に備えるため、あらかじめ先進医療保障を付けておくのも1つの選択肢です。

この記事の執筆協力

執筆者名

篠田わかな(フリーライター・ファイナンシャルプランナー)

執筆者プロフィール

外資系経営コンサルティング会社にて製造・物流・小売部門のコンサルタントとして業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。

募集文書管理番号
07E1-29A1-B20098-202101

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